大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和37年(行)22号 判決

原告 荒木喜太郎

被告 国

主文

本件訴え中別紙目録記載六、七、一〇、一一の各土地に関する部分を却下し、その余の各土地に関する請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

一、原告の申立

1、被告が原告に対し昭和二四年二月二六日別紙目録記載の各土地についてした買収処分は無効であることを確認する。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告の申立

1、本件訴えを却下する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者双方の主張

一、原告の主張

(一)  被告は、昭和二四年二月二六日原告所有の別紙目録記載の土地中六、七、一〇、一一の土地を除くその余の各土地につき自作農創設特別措置法第三条第一項による買収処分(以下本件買収処分という。)をした(なお六、七、一〇、一一の各土地は買収されていない)。

(二)  しかしながら、本件買収処分は次に述べる理由により無効である。

(1) 右各土地は、昭和一三年東京都知事の認可を得て宅地に造成した土地であり、農地ではなかつた。(2)昭和二四年二月都知事より買収令書の送達をうけたが、対価を受領していない。

(三)  よつて、申立のとおりの判決を求める。

(四)  (被告の主張に対し)被告主張のような確定判決があることは認める。

二、被告の主張

原告の主張(一)は認める。しかし、別紙目録記載の土地中一ないし五、八、九および一二の各土地については、原告はさきに東京都知事を相手に本件買収処分の無効確認の訴え(東京地方裁判所昭和二八年(行)第七三号)を提起したが、第一審で請求棄却の判決があり、さらに控訴上告したが、いずれも棄却され、右の一審判決が確定しているから、重ねてその買収処分の無効確認を訴求する利益がない。また、別紙目録記載の土地中六、七、一〇、一一の各土地については、被告は買収処分をしていないから、本件訴え中右各土地につき買収処分の無効確認を求める部分は、訴訟の対象を欠いているといわなければならない。

よつて、本訴は不適法であるから却下さるべきである。

第三、証拠関係〈省略〉

理由

一、別紙目録記載六、七、一〇、一一の各土地に関する申立てについて

これらの各土地について買収処分がなされていないことは原告の自陳しているところであるから、本件訴え中右各土地について買収処分の無効確認を求める部分は、無効確認の対象を欠くというほかなく、不適法である。

二、別紙目録記載一ないし五、八、九および一二の各土地に関する請求について

被告が原告に対し昭和二四年二月二六日これらの各土地について自作農創設特別措置法第三条第一項による買収処分をしたこと、これに対し原告はさきに東京都知事を相手に右買収処分の無効確認の訴え(東京地方裁判所昭和二八年(行)第七三号)を提起したが、第一審で請求棄却の判決があり、控訴、上告したが、いずれも棄却されて右の一審判決が確定したことは当事者間に争いがない。

被告は右のように本件買収処分についてその無効確認を求める請求を棄却した確定判決がすでにある以上、再度本件買収処分の無効確認を訴求する利益がないと主張するが、行政処分の無効確認訴訟においては、行政処分のなされた当時における無効原因だけではなく処分後における処分の失効原因をも無効事由として主張し得、一旦無効確認請求棄却の判決が確定した後においても、その後における原因に基づいてさらに無効確認の訴えを提起することを妨げないものと解されるから、本件訴え中前記各土地に関する部分が前記確定判決を経た事件と同一とはいえず、したがつて、本件訴え中前記各土地に関する部分は訴えの利益を欠くものとして不適法とはいえない。しかしながら、裁判所は前訴の判決の既判力に拘束される結果、前訴の控訴審における最終口頭弁論終結当時以前に遡つて処分の効力を審査してこれを否定することはできないものというべく、また前訴の口頭弁論終結後における本件買収処分を失効せしめる事情については原告の何ら主張立証しないところであるから、結局原告の右請求は理由がないものというべきである。

三、よつて、本件訴え中別紙目録記載六、七、一〇、一一の各土地に関する部分は不適法であるからこれを却下し、その余の各土地に関する請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 位野木益雄 田嶋重徳 小笠原昭夫)

(別紙目録省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例